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足と靴の医学 / 整形外科医師 : 町田英一
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2018年8月19日更新

内反小趾(ないはん しょうし)、バニオネット
に関する質問集

 実は私も内反小趾です。靴によっては歩けないほどの痛みがあります。整形靴にしてから痛みは無くなりました。
内反小趾とは?
内反小趾の写真  小趾が内反する疾患です。(そのまんまです) つまり足の小指、が親指側に曲がります。指の付け根が外側に出っ張ります。外反母趾と同時に起こる事も多くあります。病院には女性の方が多く来院します。女性の方がお洒落靴を履くため痛みが出る事が多いのですが、男性にも多くあります。

 左の写真は30歳女性、矢印の部分に靴が当たって赤くなり、痛みがあります。パンプスで長い時間は歩けません。


内反小趾のX線写真  内反小趾のX線写真は外反母趾と同じく開張足です。足の指のつけ根から甲の部分(中足骨)が広がります。そのため、小趾と中足骨は前から見ると回旋します。第5中足骨は横から見て弓状に弯曲して見えます。これは回旋のためにX線前後像で弓なりに見えると考えられます。


内反小趾が靴に当たって痛い場合の治療は?
靴  矢印の部分が靴に当たりますから、幅広の靴で、この部分の革をポイント・ストレッチにより伸ばします。

ポイント・ストレッチ  道具を使ってポイント・ストレッチを行います。
内反小趾で足の裏が痛い場合の治療は?
足底胼胝  内反小趾のために足底の一部に強い圧力が掛かり胼胝(たこ)やウオノメができて痛みます。

足底胼胝  タコが酷くなとウオノメになり、押すと強い痛みがあります。例えば、糖尿病により神経が鈍くなると痛みが軽いのですが、タコ、ウオノメは大きくなります。 

足底挿板  一般的に足底挿板を用いますが日本の市販靴に合わせた薄い中敷きでは効果も薄くなります。ドイツの整形靴または深さの深い運動靴を用いて、厚い中敷きを使うのが最良です。厚い中敷きの第5中足骨の骨頭部分への圧力が減るように薄くします。それ以外の部分、特に中足部の横アーチを厚くします。

内反小趾の手術は?
手術前後写真  ほとんどの場合、靴と中敷きの調製で痛みが取れるので手術は行いません。ダンサー、スキー、スノーボード選手、ファッションモデルなど、職業、スポーツのために、どうしても御希望の場合には手術を行います。手術方法は外反母趾とほぼ同じですが、骨が小さくて固定が難しく、軟部組織が薄いために難しく、注意深い手術が必要です。

 左が手術前、右が手術後です。足の幅が明らかに狭くなっています。手術をしても厚い中敷きは必要です。


手術前後のX線写真  別の患者様の手術前後のX線写真です。35歳女性で、強い開張足のために外反母趾と内反小趾が有り、歩くたびに激痛がありました。整形靴により治療しましたが、どうしても痛みが強いので手術を行いました。外反母趾は吸収ピンを用いて遠位骨切り術、内反小趾は第5中足骨の基部で骨切りを行い、足の幅を狭くしています。金属のワイヤーは3〜5カ月後に骨が充分に癒合してから抜きました。

 このように外反母趾手術、内反小趾手術を同時に行う事も可能です。小指を引っ張って治すのではなく、開張足に対する手術を行います。



以下は専門家向き
疾患名は?
 内反小趾(digitus quintus varus ラテン語)は日本整形外科学会用語集(第5版)に収載されています。tailor's bunionとは昔、縫い物をする人があぐらをかいて座るのをtailor's sittingと呼び, 床に当たって胼胝や炎症を起こす事から呼ばれます。bunionette(バニオネット)は「第五中足骨骨頭外側の滑液包腫脹」と日整会用語集に記載されています。外反母趾の滑液包炎(bunion)に対してbunionetteと呼びます。中足骨の形から Metatarsus quintus valgus(第5中足骨外反症、ラテン語)とも呼ばれます。

 英独仏語では医学用語としてラテン語のdigitus quintus varus、英語では一般的にbunionette と呼びます。

文献
 ごく一部を古い順に並べています。先生方の御研究に役立てば幸いです。 欧米では数多くの論文がありますが日本語はわずかしか有りません。間違い、御意見など町田にメール[email protected]いただければありがたく存じます。
  1. 松岡道治,人體畸形矯正學,第五趾内轉ノ症,pp305-306,丸善,(明治43年)1910
  2. Davis H.,Metatarsus quintus valgus.,Br.Med J.,?,664-665,1949
  3. Leach,R.E.,Igou,R.,Metatarsal osteotomy for bunionette deformity.,Clin Orthop,100:171-175,1974
  4. Kitaoka HB, Holiday AD Jr,Lateral condylar resection for bunionette.,Clin Orthop,278,,183-92,1992
  5. 菅森毅士・他,第5趾特発性内反症の1例,関東整災,23,466-468,1992
  6. 西川学・他,逆Mitchell法にて観血的に治療した内反小趾の2例,日本足の外科学会誌,13,209-211,1992
  7. 町田英一,赤木家康,丸山公,大幸俊三,佐野精司,中本譲, 内反小趾(バニオネット)に対する手術 一第5中足骨遠位骨切り術(chevron)と骨幹部骨切り術,日本足の外科学会雑誌,16,1-4,1995
  8. 町田英一, 内反小趾,OS NOW,26,足部疾患の治療Part2,86-91,メディカルビュー社,1997

でなたか、これより古い内反小趾の日本語文献があれば教えていただければ幸いです。
人體畸形矯正學の表紙
資料 人體畸形矯正學_pp306 人體畸形矯正學_pp 305

松岡道治,人體畸形矯正學,第五趾内轉ノ症,pp305-306,丸善,(明治43年)1910
「第五趾内轉ノ症」
「稀有ナル畸形ナリ小趾ノ第四趾ニ内轉介在スルモノヲ云フ、本症ハ時トシテ先天性ニ来ルモ多クハ狭隘ナル靴ニ原因ス、」


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